新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第7波拡大傾向における県内透析医療体制の現状とご協力のお願い

拝啓
平素、長野県透析医会および長野県透析研究会の活動にご理解頂き大変感謝申し上げます。
さて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波による感染者数は長野県内においても最高値を更新している状況となっており、今後もまだ収束が見込めません。
コロナ陽性透析患者の対応については、原則、無症状・軽症であっても入院治療の対象とされておりましたが、コロナ陽性透析患者が多数発生している東京などにおいては、無症状・軽症で自立されている患者さんについては、自宅待機および外来透析の継続といった基本方針が令和4年2月の時点で打ち出されております。(令和4年7月15日付の日本透析医会からの文書を添付致します)。
長野県においては東京ほどの感染状況ではなかったため、無症状・軽症であってもコロナ陽性透析患者は入院治療対象という原則をこれまで維持してきましたが、令和4年8月に入りコロナ対応医療機関において、透析患者以外のコロナ感染者の入院が多くなってしまった結果、感染症病床に空きがなくなりコロナ陽性透析患者を入院させることができなかった事例の報告がありました。このコロナ陽性透析患者は比較的年齢が若く生活は自立しており、症状は軽症で、全身状態が良好であったため、かかりつけの維持透析施設において外来維持透析を継続する方針となりました。当該維持透析施設においては、維持透析患者の少ない火木土の午後帯に、時間的・空間的隔離を行った上で外来維持透析を継続して頂いています。 今回の症例以外にも、同一の医療圏内で同時期に複数の患者が発生した際には、医療圏をまたいだ広域調整を行うケースも見られ、第7波感染拡大期にはその調整も難航し、外来透析を行ったケースもあったとのことです。
長野県内で発生したコロナ陽性透析患者の臨床経過を解析しますと、現在流行しているオミクロン株では透析患者であっても重症化する症例は少なく、特殊な治療も必要とせず、対症療法のみで隔離期間(10日)が過ぎれば退院していく患者が大多数を占めます。この事実を鑑みると、自立している無症状~軽症のコロナ陽性透析患者であれば、自宅療養を継続しながら外来維持透析を継続することも不可能では無いと思われます。現在、かかりつけ維持透析施設にコロナ陽性透析患者の外来維持透析の継続を
お願いする感染拡大フェーズに入ったということをご理解頂き、感染症病床のベッドが満床の場合には何卒ご協力のほどお願い申し上げます。
かかりつけ維持透析施設におけるコロナ陽性透析患者の維持透析の施行にあたりましては、感染者と非感染者との時間的又は空間的な分離を行う等の感染対策の徹底が必要となります。各維持透析施設におかれましては、コロナ陽性透析患者の維持透析の継続について、どのような感染対策が取れるか事前にご検討をお願い致します。
また、新型コロナウイルス感染対策合同委員会の調査から、ワクチン接種により透析患者の致死率が低下することが報告されています。現在行われているワクチン4 回目接種の確実な施行を促して頂ければと思います。
一般的なコロナ感染予防としては、今までの感染対策を地道に厳格に継続させることが何よりも重要となります。
毎回のお願いで恐縮ですが、下記の院内における感染対策の徹底や協力についてあらためて徹底のほどお願い申し上げます。
① 患者教育の徹底(常時マスク着用、手指衛生の徹底、毎日の体温測定と健康状態の把握、体調不良時の事前の電話連絡、他地域への移動・不要不急の外出や旅行は控える、集団での会食を控える、等)、
② 透析室での感染対策の徹底(患者間隔をあける、室内の換気を定期的に行う、環境表面の消毒を徹底する等)、
③ 医療従事者への注意喚起(体調管理と体調不良時の出勤停止、職場における3密の回避、他地域への移動・不要不急の外出や旅行は控える、集団での会食を控える、等)、
④ COVID19疑い患者への感染対策の徹底(空間的・時間的隔離の徹底)、
⑤ 個人防護具の着用(平時より穿刺や返血などの手技は、ディスポーザブルガウンまたはプラスチックエプロン、サージカルマスク、ゴーグルあるいはフェイスシールドを着用する、それ以外の場面でもサージカルマスクは常時着用し手指衛生を徹底する)と環境表面の清掃・消毒の徹底、
※適切に感染対策を行ったうえでの患者への対応は、濃厚接触者にはなりません。
(参考)
※1 第 87 回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年6月8日)
『“効果的かつ負担の少ない”医療・介護場面における感染対策』
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000948595.pdf
※2 日本環境感染学会『医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第4版』
(令和3年11月22日) http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID-19_taioguide4-2.pdf
※3 令和2年度厚生労働科学特別研究事業「新型コロナウイルス感染症に対する院内および施設内感染対策の確立にむけた研究」(研究代表者:賀来満夫)
『医療機関における新型コロナウイルスにおけるゾーニングの考え方』(令3年7月28日)
http://www.tohoku-icnet.ac/covid-19/mhlw-wg/images/division/medical_institution/d01_pdf03.pdf
〇高齢者施設向けですが、県から感染対策研修動画の提供がありましたので参考にしてください。
https://youtu.be/jqCLzeYjSPw (※2022年6月1日現在の内容です)
なお、オミクロン株は非常に感染力が高く家族内感染が多いのが特徴です。
同居家族からの感染にも特段の注意が必要と思われますので、患者および医療従事者の同居家族の体調変化(発熱など感染症状の有無)についても積極的に確認をして頂ければと思います。
患者および医療従事者の同居家族または日常的に接する人に、37.5℃以上の発熱、咳嗽・咽頭痛、味覚障害・嗅覚障害、下痢などの症状があった場合には、症状発症者に積極的にCOVID-19検査を受けて頂くように促すとともに、濃厚接触者となる患者や医療従事者に対しては厳重な体調変化の経過観察と積極的なCOVID-19検査を施行して頂ければと思います。
なお、長野県内においてCOVID-19陽性透析患者が発生した際には、新型コロナウイルス感染症対策合同委員会および長野県透析医会に症例報告をお願いしておりますので、引き続きご協力をお願い致します。
今後とも、よろしくお願い申し上げます。
敬具

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